母も歩けば そのニ

タバコ屋のおばちゃんにさよならして、また母と歩き始める。
つい最近まで魚屋だったところが普通の家になっている。
どこも高齢な上に後を継がすほど儲からない。
それでも建物がある家はまだ良い。

一本道の先を二人並んで歩く人あり。
その速度からしてお年寄りと思った。
二人との距離がどんどん縮まり、二つ目の信号を越えてアーケードに入ったところの呉服屋の前で追いついた。

私が物心ついた時からある呉服屋。
商品が陳列されてはいるが、売れているようにも新しくも見えない。
それでも女の人は関心があるもので、鄙びた陳列棚を覗きに近寄る。
二人ともおばあさんだった。

母がひょいと横を向き「こんにちは。」と背の高いほうの人に声を掛けた。
その人は耳が遠いのか振り向かない。
母がもう一度声を掛けると、その人は振り返り、母と挨拶を交わした。

2、3メートル離れて見ていた私を見て、その人が言った。
「まあ、ゆうこちゃん?ゆうこちゃん!
すぐわかるわ。子供の時のまんまやね。」
そんな訳ない。
田舎の年寄りは口がうまい。

さんざ褒めていただくが、残念なことに私はこの人を覚えていない。
実家のすぐ近くに郵便局があって、そこも同級生の家だったが、その人は同級生の叔母さんらしい。
今は郵便局がないばかりか、その同級生も三十七歳で亡くなってしまった。
そう言えば彼のお母さんに、その人は似ていた。

その人は三人姉妹で自分は末っ子、一緒に歩いていたもう一人の小さいおばあさんはその人の長姉だった。
なんと、御年九十歳!
小柄だけど背筋がピンと伸び、何よりも綺麗なことに母と私は驚いた。

「九十歳⁈へえー!まあ綺麗な!」を母が繰り返すので、そのおばあさんは嬉し恥ずかしそうに
「褒めていただいてありがとう。」と綺麗にお辞儀をされた。
その様子もまた、とても可愛かった。
母もまた生きる目標ができたのではないかと、私は思った。


犬も歩けば棒に当たると言うが、母と歩けばおばあさんに当たる故郷のお話。
なかなか目的地に行きつかないのだった。

(終わり)

☆今日のまかない
親子丼、茄子と胡瓜のぬか漬け
b0327247_1602817.jpg



★明日は夫婦で久々の健康診断に行きます。
昨年は人間ドックに行く予定でしたが、私の実家の問題で予約が取れず、そして今年はオットの実家の問題で…
予約の要らない健康診断だけでも、とりあえず受けておこうと思います。
朝ご飯抜きが嫌だけど、仕方ないですよね。
[PR]
Commented by わさお at 2014-06-28 23:01 x
先日、高校の同窓会名簿を見ていて、卒業後全く会えてなかったのですが、なかの良かった同級生が、亡くなっていたのを知りました。他にも数名亡くなっている人がいて、自分もそういう歳になったのだと知らされました。
Commented by anatatoyu at 2014-06-29 07:20
>わさお君
ほんとにねえ。
こんなこと言うと亡くなった人に失礼かもしれないけど、早くに亡くなるとたくさんの人に偲ばれるよねえ。
それがちょっと羨ましい気もします。
年取るとそんな感覚も鈍くなるように思うし。
Commented by 所長 at 2014-06-29 09:26 x
目的地にすぐに着くもよし、道草食って時間がかかるもよし。
ちなみに私は道草ばかりで目的地にたどり着けないことばかりです。
Commented by anatatoyu at 2014-06-29 13:49
>所長さん
まわり道って歌もあるくらいですもんね。
道草って美味しいんです。
目的地が途中で変わってもいいと思います。
by anatatoyu | 2014-06-28 16:00 | 母のこと | Comments(4)

ふつうの暮らしのふつうのご飯、日々の出来事綴ります。


by ゆう